COLUMN
「就業規則って作らなきゃいけないの?」
「社会保険の手続き、これで合ってる?」
「スタッフからの給与計算ミスの指摘が怖い」
企業の成長とともに従業員が増えると、労務管理や給与計算などの業務が急に増え始めます。そんなときに頼りになるのが、人事・労務のプロである「社労士」です。
法改正も多く、給与計算や労働時間の管理にも専門的な知識が求められる中、「社労士と顧問契約をすべきかどうか」で迷う経営者は少なくありません。
最近では、労務管理システムの導入やアウトソーシングも進んでいますが、果たして「社労士との顧問契約」は本当に必要なのでしょうか?
この記事では、
社労士の顧問契約が必要な企業の特徴
相談できる業務内容
顧問契約のメリット・デメリット
顧問料の相場と費用対効果
をわかりやすく解説します。
「社労士と契約すべきか、スポット相談で十分か…」
そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。
社労士の顧問契約は、すべての企業にとって必ずしも必要とは限りません。たとえば、1人社長や家族経営の小規模な企業では、継続的な顧問契約ではなく、困ったときに頼るスポット契約を活用すれば十分なケースもあります。
では、どのような企業やシチュエーションで顧問契約をすべきでしょうか?
ここでは、社労士の顧問契約が必要とされるケースを大きく3つに分けて紹介します。
新たな支店の開設や新規事業の展開など、事業を拡大する際には、社労士の顧問契約を検討すべき場面の一つです。
例)新しい支店をオープンした時の手続き
労働保険:保険関係成立届、継続事業一括認可申請書、36協定など
雇用保険:適用事業所設置届、被保険者資格取得届、被保険者転勤届など
このように、多くの書類を作成・提出する義務があり、提出漏れやミスがあると差し戻される等、作業の負担が大きくなります。
また、開設時に必要な手続きの中には一度きりで終わるものも多く、時間をかけて調べても次に活かす機会が少ないのが実情です。
無駄な手間を省くためにも、手続きに精通した社労士に依頼するとよいでしょう。
事業拡大とともに、従業員も増加します。
従業員数が増えると、労務・勤怠の管理や給与計算・社会保険の手続きなどの事務作業に加え、労務トラブルも頻発します。
従業員に対する適正な管理が求められ、労働基準監督署や年金事務所の調査が入り、法令違反があると是正勧告を受ける可能性があります。
法令違反は、従業員の信用を失いかねない重大な問題です。
このようなトラブルを未然に防ぐためにも、専門知識を持つ社労士のサポートが重要です。
さらに、従業員数が10名以上になると、就業規則の作成義務が生じます。就業規則の作成には法律の知識が必要であり、不備があると労務トラブルにつながる可能性があります。
いざというときのためにも、日頃から企業の内情を理解している社労士と顧問契約しておくと安心です。
給与計算や社会保険の手続きは、ルーティン業務としてこなせるようになるものの、法律の理解や法改正への対応が欠かせません。特に、給与計算では小さなミスが従業員の不満や信頼低下につながるため、慎重な対応が求められます。
細かなルール変更の積み重ねや従業員数の増加により、業務負担が大きくなると、改善や効率化が必要となる場面が増えてきます。
たとえば、勤怠集計方法の見直しや給与明細のペーパーレス化、昇給や手当のルールを明確にすることも、組織の安定した運用に欠かせません。
ただ、日々の業務に追われていては、改善に取り組む時間やアイデアがなかなか生まれないものです。
そこで、勤怠集計の業務効率化や給与制度の整備をサポートできる社労士に相談することで、事務担当者の負担を軽減しつつ、専門的な視点から実現できる改善策を見つけやすくなります。
社労士が対応できる業務は、社会保険労務士法により定められており、人事・労務に関する幅広いサポートが可能です。
ここでは、社労士が企業に提供できる3つの業務について解説します。
一つ目は、「1号業務」と呼ばれる行政機関書類の作成と提出代行です。
具体的には、次のような業務が含まれます。
● 企業全体に関する手続き
新しく会社を立ち上げたときの各種申請
労働保険の年度更新や社会保険の算定基礎届の作成・提出など
● 従業員個人に関する手続き
入社・退職時の資格取得届や喪失届の作成・提出など
雇用保険の育休給付金申請書や社会保険の傷病手当金請求書の作成・提出など
● 企業向け助成金の申請
キャリアアップ助成金の受給要件確認や届出など
助成金申請の労働局からの問合せ対応など
これらの手続きは企業の事務担当者でも対応できますが、法律や制度の知識が必要で、細かなルールが多いため、ミスや漏れが発生しやすい業務です。
提出期限は手続きごとに異なり、特に助成金や給付金の申請は期限を過ぎると受理されないケースもあります。提出漏れによる不支給となってしまうと、従業員の信頼を大きく損なう可能性が高いです。
また、1号業務は社労士の独占業務であり、法律上、社労士以外が代行することはできません。それほど専門性が求められる業務のため、手続きのミスや提出漏れを防ぐには、社労士に依頼するのが確実でしょう。
二つ目は、「2号業務」と呼ばれる就業規則や労働者名簿・賃金台帳・出勤簿等の作成です。
1号業務と同じく社労士の独占業務であり、代行を依頼できるのは社労士のみです。
就業規則の作成や変更には、労働関連法令の知識と、自社に合ったルール作りが欠かせません。
また、「法定三帳簿」と呼ばれる労働者名簿・賃金台帳・出勤簿は、労働基準法により作成が義務付けられています。労働者名簿と賃金台帳の記載事項は法律で定められているため、漏れなく作成・管理する必要があります。
このようなコンプライアンス違反を防ぎ、従業員に信用される適切な労務管理を行うためにも、社労士と顧問契約を結んで、継続した管理を依頼すると安心です。
三つ目は、「3号業務」と呼ばれる労務管理や社会保険に関する相談・指導を行うコンサルティング業務です。
具体的には、人事評価制度の設計支援や労務トラブルを防ぐためのアドバイスなど、企業の人事・労務に関する幅広いサポートを提供します。
1号・2号業務とは異なり、3号業務は社労士の独占業務ではありません。しかし、人事・労務に関する専門知識を持ち、法改正にも対応できる社労士に相談することで、より的確なアドバイスを得られます。
企業の成長に伴い、働きやすい環境づくりや適切な労務管理の重要性は増していきます。実績のある社労士のアドバイスを活用することで、労務トラブルを未然に防ぎ、組織の健全な運営につなげられるでしょう。
前章では、社労士の必要性や企業に提供できるサービスを解説しましたが、社労士と顧問契約を結ぶとどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、顧問社労士の3つのメリットを紹介します。
事業の成長に伴い、労働保険・社会保険の手続きや給与計算など、対応しなければならない業務が増えていきます。さらに、法律を遵守した労務管理を行う必要があり、経営者が本業と関係のない業務に多くの時間を取られてしまうことも少なくありません。
社労士と顧問契約を結ぶと、これらの専門的な業務を任せられるので、事業に専念いただくことが可能です。
手続きや管理の負担を減らすことで、生産性の向上にもつながるでしょう。
会社の規模が大きくなるにつれて、労働保険・社会保険の手続きや給与計算ができる労務担当者が必要になります。
厚生労働省が運営するサイトによると、令和5年の人事労務担当者の平均年収は、493.4万円(月収30万円前後)です。
厚生労働省:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/432
一方で、100人規模の企業が社労士と顧問契約(手続き・給与計算込み)を結んだ場合、月額15万円程度が目安となります。
先ほどの労務担当者の年収493.4万円と比べて、顧問契約料は年間180万円と大幅なコスト削減が実現します。
さらに、労務担当者の休職や退職リスクを心配する必要がなく、安定したサービス提供を受けられるのも大きなメリットといえるでしょう。
労務管理に関する法改正は頻繁に行われ、企業はそのたびに制度の見直しや就業規則の変更が求められます。こうした情報を把握し、適切に対応するのは負担が大きいものです。
しかし、社労士と顧問契約を結ぶことで、最新の法改正情報を迅速にキャッチでき、自社に適した専門的なアドバイスを継続的に受けることができます。
また、労務管理システムに強い社労士であれば、システムを活用した業務効率化の提案も可能です。労務のデジタル化を進めたい企業にとって、頼れる存在となるでしょう。
▼2025年最新の法改正情報はこちら
2025年 労働法改正:人事労務担当者が押さえるべき重要な法改正
社労士と顧問契約を結ぶさまざまなメリットを紹介しましたが、一方で注意すべき点もあります。
ここでは、顧問社労士の3つのデメリットを紹介します。
社労士と顧問契約を結ぶと、毎月一定額の顧問料がかかります。
従業員数が多い企業や、手続き・給与計算を一括で依頼したい企業にとっては、コスト以上のメリットを得られることが重要でしょう。
社内で完結できる小規模な企業や、「万が一の備え」として契約している場合は、費用対効果が見合わず割高と感じることもあります。
このようなデメリットを回避するためには、社労士と顧問契約を結ぶ理由を明確にしておくとよいでしょう。
社労士に労務管理を丸投げしたいと考える経営者もいますが、社労士ができるのはあくまでアドバイスやサポートであり、企業の意思決定に及ぶ業務まで代行することはできません。
たとえば、新入社員の給与額の決定や、社員の労働時間の把握は、経営者が責任を持って判断・管理すべき事項です。社労士は相談や提案を提示することはできますが、最終的な判断は経営者自身が行うことが重要です。
社労士は、企業の成長を支える「パートナー」として伴走する存在です。「経営者が意思決定すべきこと」と「社労士に任せるべきこと」を明確にすることで、より良い関係が結べるでしょう。
顧問契約を検討する際は、どの業務を任せるのかを整理し、適切な役割分担を意識することが大切です。
顧問社労士とは長期的な付き合いになるため、相性が合わないと業務の負担が増えてしまうことがあります。
たとえば、レスポンスが遅い、説明がわかりにくい、依頼の意図を理解してもらえないといった問題があると、やり取りのたびに時間がかかってしまいます。
そのため、契約前に社労士との相性を確認することが重要です。
自社のニーズに合ったサービスを提供できる社労士を選ぶために、少なくとも3事務所と面談することをオススメします。スムーズなやり取りが可能か、サービス内容の違いなど、顧問契約を結ぶ前に慎重に判断しましょう。
▼社労士の見極め方についてはこちら
自社に合う社労士の探し方と選び方とは?見極める3つのポイントも解説
社労士と顧問契約を結んだ場合、従業員数や契約内容によって大きく異なります。
全国の社労士が加入する「社会保険労務士会」では、かつて報酬を一律に定めていた時期があり、現在もその水準を参考にする社労士事務所も少なくありません。
以下は、その報酬基準をもとにした目安の報酬月額です。ご参考にしてください。
人員数 | 報酬月額 |
1~4人 | 21,000円 |
5~9人 | 31,500円 |
10~19人 | 42,000円 |
20~29人 | 52,500円 |
30~49人 | 63,000円 |
50~69人 | 84,000円 |
70~99人 | 105,000円 |
100~149人 | 136,500円 |
150~199人 | 168,000円 |
※200人以上は別途協議
▼当法人の顧問料シミュレーションはこちら
顧問料シミュレーションページ
社労士との顧問契約は、すべての企業にとって「必要不可欠」ではありません。
従業員数が少ない場合や、単発の手続きだけで済む場合には、スポット契約で十分なケースもあります。
一方で、
・事業が拡大し手続きが増えている
・社内に専門知識を持つ人がいない
・労務トラブルのリスクを減らしたい
こういった状況にある企業にとっては、社労士の継続的なサポートが大きな安心材料となります。
特に「労務管理の外注化」「人件費削減」「法改正への対応」といった観点からは、顧問契約が経営上のリスクヘッジにつながることも多いのです。
顧問料は発生しますが、その分「事業に集中できる環境」を得られることは大きなメリット。
どの業務を任せるのか、社内とどう役割分担をするかを明確にし、最適なパートナー社労士を見つけてください。
あかつき社会保険労務士法人は、お客様の業種や企業規模・ご希望に沿った顧問契約をご提案します。
「負担が大きい労務管理を仕組み化したい」「労務の外注化でコストを削減したい」といったお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
まずはオンラインでヒアリングを実施します。お問い合わせフォームより、ご連絡をお待ちしております。