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【記入例あり】高年齢者・障害者雇用状況報告書とは?対象企業や計算方法、記入時の注意点を社労士が解説

高年齢者雇用状況等報告書障害者雇用状況報告書は、毎年6月1日現在の雇用状況をもとに作成し、7月15日までに厚生労働省(ハローワーク)へ提出する必要がある重要な報告書です。

この記事では、次の点を社労士がわかりやすく解説します。

対象となる企業や報告義務の有無

対象者や人数の数え方

各報告書の記入方法と注意点

「報告書が届いたけれど、どう書けばいいのかわからない」とお悩みの実務担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

なお、この報告書の提出時期は、労働保険の年度更新や社会保険の算定基礎届と重なる時期です。他の手続きと合わせてスケジュール管理を行い、提出漏れのないようご注意ください。

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高年齢者・障害者雇用状況報告書とは

「高年齢者」及び「障害者」の安定的な雇用を推進するため、企業には雇用状況の報告義務が課されています。提出先や提出日は共通ですが、報告書は高年齢者用と障害者用で分かれています。

ここでは、それぞれの報告書の目的や、対象となる企業について解説します。

高年齢者雇用状況等報告書

高年齢者雇用状況等報告書は、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」に基づき、企業が毎年提出することを義務づけられている報告書です。

対象企業原則従業員を雇用するすべての企業
(ただし、原則従業員20人以上を雇用する企業へ通知)
報告の目的高年齢者の雇用状況や雇用確保措置(定年制度など)の導入状況の把握
基準日毎年6月1日現在で雇用する60歳以上の人数

提出日・提出先

7月15日までに所轄のハローワークへ提出
未提出・虚偽の罰則特になし

なお、対象となる企業は、高年齢者の雇用が「0人」であっても提出義務が生じます。対象外と自己判断せず、必ず期限までに提出しましょう。

障害者雇用状況報告書

障害者雇用状況報告書は、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」に基づき、企業が毎年提出することを義務づけられている報告書です。

対象企業原則従業員数40人以上を雇用する企業
報告の目的障害者の雇用実態や法定雇用率の達成状況の把握
基準日毎年6月1日現在で雇用する身体・知的・精神障害者の人数

提出日・提出先

7月15日までに所轄のハローワークへ提出
未提出・虚偽の罰則

30万円以下の罰金(障害者雇用促進法第86条第1項)

高年齢者雇用状況報告書と同じく、障害者の雇用が「0人」であっても提出義務が生じます。さらに、提出しない場合や人数の虚偽などが発覚した場合、30万円の罰金が課せられるため、正しい情報を期日までに必ず提出しましょう。

提出までの準備と流れ

高年齢者・障害者雇用状況報告書は、次の流れで提出します。

① 毎年5月下旬〜6月上旬に報告書が届く

高年齢者・障害者雇用状況報告書は、毎年5月下旬〜6月上旬にかけて、事業所宛に送付されます。

A4サイズのオレンジ色の封筒で届き、同封物にはそれぞれの報告書用紙のほか、記入の手引きや提出先の案内なども含まれています。
封筒が届いたら、すぐに中身を確認し、記載が必要な情報を早めに準備しておきましょう。

② 必要な社内情報を収集する

報告書の作成をスムーズに進めるために、次のような情報を確認・整理しておくと、効率的に行うことができます。

就業規則定年制度や継続雇用制度の内容を再度確認する
前年の報告書

過去の控えを参考に記載内容や対象者の基準などを確認
ただし、法改正などには注意する

6月1日時点の人数常用労働者数、離職者数、定年退職予定者、障害者の雇用人数(種類・等級別)など

③ 報告書の作成・提出

報告書の作成が完了したら、7月15日までに所轄のハローワークへ提出しましょう。
対象企業には報告書一式が郵送されますが、厚生労働省ホームページから様式をダウンロードして使用することも可能です。

提出方法は以下のいずれかです。

郵送または窓口持参(紙で提出)

電子申請(e-Gov)※提出期限が近い場合や手続きの効率化に有効

▼厚生労働省:報告書の各様式(エクセル)
高年齢者雇用状況報告書(エラーチェックツール)
障害者雇用状況報告書

各報告書の記入方法は、次章にて解説します。

【高年齢者雇用状況等報告書】記入方法と注意点

高年齢者雇用状況等報告書は、項目ごとに具体的な記入が求められます。

それぞれの項目で記入すべき内容や注意点を、順を追って見ていきましょう。

定年制の状況

まずは、就業規則に記載された定年年齢を確認しましょう。

たとえば60歳や65歳など、実際の制度に応じて「ロ 定年あり○○歳」の欄を埋めます。
あわせて、制度の見直し予定がない場合は「二 改定・廃止予定なし」にチェックをつけましょう。


出典:厚生労働省「モデル就業規則」「高年齢者雇用状況等報告エラーチェックツール」をもとに一部加工して作成

継続雇用制度

定年後の継続雇用についても、就業規則のとおり記入します。
「希望者全員を65歳・その後基準該当者を70歳」までと就業規則で定められている場合、次のとおり「b 対象の(イ)」を埋めます。


出典:厚生労働省「モデル就業規則」「高年齢者雇用状況等報告エラーチェックツール」をもとに一部加工して作成

創業支援等措置と65歳を超えて働ける制度

創業支援等措置とは、高年齢者雇用安定法に基づく「65歳から70歳までの就業機会確保」に関する努力義務のひとつです。

この項目は、業務委託契約などの65歳以降も雇用に限らず働く機会を設けているかどうかの確認です。
制度を導入していない場合は、「ロ 創業支援等措置を実施していない」「二 創業支援等措置の導入・改定予定なし」の欄にチェックを入れましょう。

65歳を超えて働ける制度等の状況は、いずれかに該当する場合は記入不要です。

定年がない場合

定年・継続雇用制度・創業支援等措置が70歳以上

継続雇用制度・創業支援等措置の上限年齢に規定がない


出典:厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告エラーチェックツール」をもとに一部加工して作成

常用労働者数と離職者数

常用労働者数には、6月1日現在で雇用されている従業員の人数を年齢区分ごとに記入します。
常用労働者の定義は、次のとおりです。

1年以上継続して雇用されているまたはその見込みがある

週20時間以上勤務している

上記を満たす正社員や契約社員、パート・アルバイトなど

過去1年間の離職者は、令和6年6月1日から令和7年5月31日の間で「解雇等」による離職者数を記載します。
ここでいう「解雇等」とは、次のようなケースが該当します。

会社都合による解雇(懲戒解雇など本人に責任がある場合を除く)

継続雇用制度の基準を満たさず退職した場合


出典:厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告エラーチェックツール」をもとに一部加工して作成

いずれも女性の人数を内訳で記入する点にも注意しましょう。

過去1年間の定年退職者や継続雇用対象者の状況

最後に、令和6年6月1日から令和7年5月31日の間で退職した高年齢者のうち、就業制度の上限年齢に達したことによる退職者数を記入します。

⑰ 65歳まで働ける制度の適用状況
例:定年60歳・希望者全員を65歳まで継続雇用している場合

対象期間中に定年60歳で退職した方

継続雇用制度(60〜65歳)の上限に達し退職した方

の人数を記入します。
週20時間未満の勤務者であっても、制度が適用される場合は含めて計上します。

⑱ 65歳を超えて働ける制度の過去1年間の適用状況
例:66〜70歳まで働ける制度を導入している場合

70歳の上限年齢に達し退職した方

の人数を記入します。
ただし、「会社が必要と認めた者」など、曖昧で主観的な基準により継続雇用されていた場合、その退職者はこの欄には計上しません。

⑲ 経過措置に基づく継続雇用の対象者に係る基準の過去1年間の適用状況
2025年3月31日で終了する経過措置(労使協定によって対象者を限定できた制度)に関する項目です。
例:年金支給開始年齢を基準に継続雇用を限定していた場合

基準に該当せず退職した方

の人数を記入します。

ただし、次のような場合は「0人」と記入してください。

希望者全員を65歳まで継続雇用している

66歳以上も働ける制度を導入している


出典:厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告エラーチェックツール」をもとに一部加工して作成

【障害者雇用状況報告書】記入方法と注意点

障害者雇用状況報告書では、常用労働者数や雇用している障害者数などを正確に記入・数える必要があります。

ここでは、報告書を作成するうえで重要なポイントと「雇用の状況」の記入方法を、順を追って解説します。

企業に定められた障害者雇用の義務

企業には「障害者雇用促進法」に基づき、一定の割合で障害者を雇用する義務があります。

令和7 年時点では、常時雇用する従業員が40人以上の民間企業に対し、法定雇用率「2.5%」の達成が求められています。


厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/000859466.pdf

たとえば、従業員数が100人の企業では、100人×2.5%=2.5人の障害者の雇用が必要です。
ただし、実際の義務は少数点以下を切り捨てた「2人以上」の雇用で達成と見なされます。

障害者数の数え方は、障害の種類や労働時間に応じて換算されます。
例: 3人の障害者を雇用している場合(換算後の合計=2人分)

週30時間以上働く身体障害者:1人分

週20時間以上30時間未満の知的障害者:0.5人分

週10時間以上20時間未満の精神障害者:0.5人分

このように複数の雇用形態を組み合わせて、法定雇用率を満たすことができます。

なお、法定雇用率を下回った場合、100人以上の企業には、不足人数1人あたり月額5万円の障害者雇用納付金が課されます。
対象となる障害者の人数や労働条件を正しく把握し、適切な雇用を行うことが重要です。

特定業種には除外率が設けられている

障害者雇用状況報告書を作成する際は、まず自社が「除外率」の対象となる業種かどうかを確認する必要があります。

除外率とは、障害者の雇用が一般的に困難とされる業種において、算定対象となる労働者数から一定割合を差し引ける制度です。たとえば次のような業種では、除外率を用いて、障害者の雇用義務を軽減できる仕組みになっています。


厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf

該当する業種の場合は、報告書の「⑨除外率」欄にその割合を記入します。一方、対象外であれば、この欄は空欄でかまいません。
なお、除外率制度は将来的に廃止が予定されており、現在も段階的に縮小が進められているため、前年度分を参照する場合は注意しましょう。

雇用労働者数と障害者数の記入

障害者雇用状況報告書を作成するうえで最も重要なのが、「常用労働者数」「雇用している障害者数」の正確な把握です。
法定雇用率を満たしているかを判断する基礎となるため、集計のルールに沿って丁寧に計算する必要があります。

⑩常用雇用労働者の数
常用雇用労働者とは、1年以上の雇用が見込まれるかつ週の所定労働時間が20時間以上の労働者です。次のように区分して集計します。

(イ) フルタイム労働者:週30時間以上
(ロ) 短時間労働者:週20時間以上30時間未満(0.5人として換算)
(ハ) 常用雇用労働者数:イ+(ロ×0.5)

また、除外率が適用される事業所があれば、「(ハ)常用雇用労働者数×除外率」で算出した人数を(ニ)法定雇用障害者の算定の基礎となる労働者の数へ記入します。


出典:厚生労働省「障害者雇用状況報告書様式」をもとに一部加工して作成

⑪常用雇用身体障害者、知的障害者及び精神障害者の数
本社や支社・支店ごとに障害者の人数を記入します。各合計の人数は、前章のとおり障害の種類や労働時間に応じて、換算します。


出典:厚生労働省「障害者雇用状況報告書様式」をもとに一部加工して作成

⑫障害者数の合計
⑪で算出した身体・知的・精神障害者の合計人数を記入します。


出典:厚生労働省「障害者雇用状況報告書様式」をもとに一部加工して作成

実雇用率と不足数の算出

最後に、企業が法定雇用率を満たしているかを確認するため、「実雇用率」と「障害者の不足数」を算出します。

実雇用率の計算方法は、次のとおりです。

⑫で算出した障害者数の合計÷⑩法定雇用障害者の算定の基礎となる労働者数×100

この実雇用率が、民間企業における法定雇用率(令和7年現在で2.5%)以上であれば、障害者の雇用義務を満たしていることになります。

一方で、法定雇用率を下回る場合は、次の計算式により不足している人数を算出します。

⑩法定雇用障害者の算定の基礎となる労働者数×法定雇用率÷100−⑫で算出した障害者数の合計

以上の「雇用の状況」のほか、事業主情報や種類別の身体障害者数・障害者雇用推進者と担当者を記載すると報告書の作成は完了です。


出典:厚生労働省「障害者雇用状況報告書様式」をもとに一部加工して作成

まとめ

高年齢者・障害者雇用状況報告書は、法令に基づき毎年提出が義務づけられている重要な書類です。
どちらも記入項目が多いため、とくに対象者の人数は事前に正確に確認しておきましょう。

提出方法は、郵送や窓口持参(紙ベース)のほか、e-Govによる電子申請も可能です。電子申請の導入に不安がある場合は、導入実績のある社労士へ相談することも検討してみてください。

提出期限は「7月15日」までと、年度更新や算定基礎届の手続きと重なる時期です。提出漏れがないよう、計画的に進めていきましょう。

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