COLUMN
「給与計算って、何をどうすればいいの?」
そんなイメージで初めて担当を任され、いざ作業に向かうと「思った以上に面倒くさい!」と感じる方がとても多いです。
特に中小企業、50〜100名規模の企業では、人事や労務の業務やトラブルが頻発する割に、人事や労務を専門に担当するスタッフが十分に配置されていないケースも多く、経理や総務が兼任している場合も珍しくありません。そのため、給与計算を一人で担当し、さらに他の業務と並行しながら進めることにプレッシャーを感じる方も多いでしょう。
この記事では「給与計算 初心者」の方に向けて、最初に知っておくべき基本知識と、負担を減らしてラクに続けられる仕組みづくりについてわかりやすく解説します。
給与計算の初心者が戸惑う原因の多くは、単にお金を計算するだけでは済まない「法律・ルールの多さ」にあります。
こうした多岐にわたる業務を、月に1回、締め切り厳守で処理するプレッシャーは相当なものです。
さらに従業員からの質問(「なぜこの額なの?」など)にも的確に答える必要があり、覚えることが山ほどあります。給与計算初心者が「完璧にやらなきゃ」と抱え込みすぎるとパンクしやすいので、まずは全体の流れをおさえ、徐々に理解を深めていく意識を持つことが大切です。
では、初心者の方が最初に理解すべき「給与計算の流れ」をざっとまとめます。
① 勤怠データの集計
残業時間、遅刻・早退、欠勤日数などをまとめます。
② 基本給と手当の計算
役職手当、住宅手当などを含めます。
③ 社会保険料・税額の控除
保険料率の確認、扶養控除など。
④ 最終的な支給額の確定
過不足がないかを必ずチェック。
⑤ 給与明細の作成と配布
クラウド明細システムの活用が増えています。
⑥ 銀行振込の準備
振込データ作成と締め処理。
特に初心者が気をつけたいのは「締日」と「支給日」の管理。
間違えると振込が遅れてトラブルになるので、社内カレンダーに必ず入れておく習慣をつけましょう。
初心者の方が混乱しやすいテーマを簡単に説明します。
時間外(残業)、休日、深夜に働いた場合に上乗せして支払う賃金です。
たとえば
といった率で計算されます。
残業にも所定外残業や法定外残業、法定外残業も60時間を超えると割増率が増加するなど、留意する点が多々あります。
この割増率は法律で決められているため、間違えると大きなトラブルになります。
また、割増賃金の計算の際には、月給者も日給者も時間単価を意識する必要があります。
残業代を計算する際には、必ず時間単価を算出して割増賃金を計算します。
では、時間単価はどのように計算すれば良いのでしょうか?
❑チェックポイント
月給 | (基本給+諸手当)÷1か月平均所定労働時間 |
日給 | (基本給)÷1日の所定労働時間 |
時給 | (基本給) |
ただし、基本給が日給や時給であっても、諸手当を月単位で支払われているような場合には、日給や時給の計算した単価と、月給で計算した単価を足して時間単価を算出する必要があります。
「これ以下では払ってはいけない」基準のこと。
都道府県ごとに決まる「地域別最低賃金」と、都道府県の産業別に決まる「特定(産業別)最低賃金」があります。
割増賃金の計算にあたっては、最低賃金を下回らないか必ず確認しましょう。
❑チェックポイント
割増賃金の時間単価を計算するときと、最低賃金の時間単価を計算するときの含まれる手当には違いがあります。
給与計算を担当するなら、必ず押さえておきましょう。
手当名 | 割増賃金 | 最低賃金 |
①家族手当 | 除外する | 除外する |
②通勤手当 | 除外する | 除外する |
③別居手当 | 除外する | – |
④子女教育手当 | 除外する | – |
⑤住宅手当 | 除外する | – |
⑥皆勤手当 | – | 除外する |
⑦臨時に支払われた賃金 | 除外する | 除外する |
⑧1か月を超えるごとに支払われる賃金 | 除外する | 除外する |
※上記以外は、割増賃金と最低賃金の計算にすべて含みます。
欠勤した日、又は遅刻早退した時間の給与を減額するルール。
月給者の場合は
「月給 ÷ 所定労働日数」で1日あたりの控除額を算出する場合
「月給÷1か月平均所定労働日数」で1日あたりの控除額を算出する場合
など、複数のパターンが見られます。
その理由は、欠勤遅刻早退控除は法律の定めがないため、会社ごとに決める必要があるためです。
就業規則や労働契約書に従って計算する必要があるので注意が必要です。
まずは、就業規則を確認しましょう。
❑チェックポイント
労働法の優先順位は以下のように決まっています。
法律>労働協約(労働組合がある場合)>就業規則>雇用契約書 |
上位のルールが優先されるため、法律がある場合には法律を優先し、無い場合には労働協約、就業規則、雇用契約書の順で優先事項を確認していきましょう。
これまで説明してきた内容のほかにも、次のような点にはいつも意識して漏れが無いようにしておきましょう。
給与計算を担当するなら、法律の基本も押さえましょう。
特に保険料率は毎年変わることが多く、「昨年と同じでいいだろう」と思っていると間違いに直結します。
社会保険料は、年齢によっても変わります。
年金事務所、労働基準監督署の調査が入ったときにも慌てないよう、社労士事務所や労務管理システムで最新情報を随時キャッチアップできる仕組みを整えておくのがおすすめです。
年金事務所の調査では、誤りがあれば遡って訂正して社会保険料を納付しなければなりません。
何より、給与計算の誤りは従業員さんの信頼を失ってしまいます。
最近では
などのクラウドシステムを活用している企業が増えています。
これらのシステムを導入することで
といった業務が一気にスムーズになります。
さらに社労士事務所と顧問契約を締結していれば
など、大幅に負担を減らすことが可能です。
給与計算初心者のうちは「全部自分で抱え込まない」選択肢を持っておくことが大切です。
給与計算を外注に丸投げするのも一つの手ですが、「一部は自社で」「一部は社労士に委託」といった“ハイブリッド型”の仕組みもおすすめです。
たとえば
と役割を分けることで、社内の確認フローも維持しつつ負担を減らせます。
▼クラウド勤怠の導入についての記事はこちら
【社労士が解説】KING OF TIME導入支援で失敗しない方法|制度設計からクラウド勤怠の最適運用まで
▼給与計算の自動化についての記事はこちら
勤怠・給与計算・社会保険手続き…労務をクラウドでどこまで自動化できる?
▼社労士の顧問契約の必要性についての記事はこちら
社労士の顧問契約は必要?迷った時の判断ポイント
中小規模(50〜300人規模)の企業では、「最小限のコストで、最大限の安心を得られる」現実的な選択肢として、このハイブリッド型管理が非常に相性が良いといえます。
給与計算は、ルールの多さと締め切りの厳しさから「初心者泣かせ」の業務といわれます。
しかし、仕組みを上手に使えば初心者でもきちんとミスなく進められるようになります。
具体的には
を取り入れることで
法改正の対応
計算ミスの防止
担当者の負担軽減
を一気に進めることが可能です。
あかつき社会保険労務士法人は、勤怠システムの導入サポートや、日々の労務管理の効率化に向けたご提案も行っております。
「勤怠システムを導入したけど、うまく運用できてない」「電子申請に切り替えたいけど、難しそうで手が出せない」といったお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
「給与計算 初心者」として最初は不安が多いかもしれません。
ですが、いまは便利な仕組みと専門家がそろっています。
「こんなことで社労士に相談していいのかな?」と迷う必要はありません。
まずは無料相談などで、自社の悩みを一度プロに共有してみてください。
きっと安心感が得られ、ラクに続けられるヒントが見つかるはずです。
まずはオンラインでヒアリングを実施します。お問い合わせフォームより、ご連絡をお待ちしております。