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COLUMN

2025年4月・10月法改正 育児介護休業法の対応タスク

【労務担当者必見】2025年4月・10月法改正 育児介護休業法の対応タスク

育児介護休業法が2025年4月と10月に、前回から3年ぶりに改正施行されます。
人事労務担当者の「具体的に何をすれば良いのか?」そんな疑問に社会保険労務士の視点から解説します。

今回の法改正では、「男女ともに仕事と育児・介護を両立できるように、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充等」を講じることが改正の趣旨として公表されています。
法改正の概要や社会的な背景、具体的なタスクを確認していきましょう。

2025年4月・10月の育児介護休業法の改正内容は?

具体的に何が変わるのか?

子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充

育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育児支援対策の推進・強化

介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等

人事労務担当者として、経営層や従業員にどのように説明するのか?

「法律が施行されるから」と単に伝えるか、社会環境の変化や今後の採用・人事施策を考慮して「若年層の意識変化」を背景に、今後の企業経営を左右する重要な施策として伝えるかで、人事労務担当者の発言の重みが変わります。

厚生労働省が2024年に実施した「若年層における育児休業等取得に対する意識調査」の資料が公表されていますので、社会環境の変化などの背景を知るために活用いただければと思います。
(厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/001282074.pdf

(一部抜粋)

若年層の92.4%が育休があることを認知している

若年層の87.7%が育休を取得したい(男性84.3%/女性91.4%)

男性の25.3%が1~3か月、43.6%は3か月以上の育休を取得希望

若年層の88.6%が配偶者にも育休を取得してほしいと思っている

61.0%が育休取得実績がない企業に就職したくない(男性57.3%/女性65.1%)

上記は公表されている調査の一部ですが、育児介護休業法の法改正は単に法律が施行されたからだけではなく、社会環境の変化に対応する重要な施策であることを経営層や従業員に理解してもらうことが重要です。

企業が対応すべき実務タスク

(育児介護休業規程の見直し)
厚生労働省から今回の法改正に対応した「育児・介護休業等に関する規則の規定例」が公開されています。
どの条文が変更になった箇所かわかり難いため、法改正に対応する条文をピックアップしてみました。

既に既存の育児介護休業規程がある場合には、既存の育児介護休業規程に合わせて修正の必要はありますが、規定例として参考になるのではないでしょうか。

2025年4月1日施行日

法改正内容≪育児・介護休業等に関する規則の規定例≫

子の看護休暇の見直し

第14条(子の看護等休暇)

所定外労働免除の対象拡大

第16条(育児・介護のための所定外労働の制限)

短時間勤務制度の代替措置にテレワーク追加

≪規定例には記載なし≫

育児のためのテレワーク導入

第19条の2(育児のためのテレワーク)

育児休業取得状況の公表

介護休暇を取得できる労働者の要件緩和

第15条(介護休暇(ケース②))

介護離職防止のための雇用環境整備

第28条(円滑な取得及び職場復帰、制度利用支援)

介護離職防止のための個別の周知・意向確認

第28条(円滑な取得及び職場復帰、制度利用支援)

介護のためのテレワーク導入

≪規定例には記載なし≫

2025年10月1日施行

法改正内容≪育児・介護休業等に関する規則の規定例≫

柔軟な働き方を実現するための措置等

第20条(柔軟な働き方を実現するための措置)

仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮

第28条(円滑な取得及び職場復帰、制度利用支援)

(社内周知・従業員への説明)
今回の法改正では、育児介護休業規程の変更で対応が完了するものに加え、以下の法改正では社内の運用フローの構築も必要になります。

「介護離職防止のための雇用環境整備」

「介護離職防止のための個別の周知・意向確認等」

「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮」

(社内体制や運用フローの構築)
<2025/4/1~ 介護に関する運用フローの取り組み内容>

対象者対応が必要な内容具体策
全体雇用環境整備

次のいずれか
① 研修の実施
② 相談窓口の設置
③ 事例の収集・提供
④ 利用促進に関する方針の周知

介護に直面した労働者周知次のすべて
① 制度の内容
② 制度の申出先
③ 給付金に関すること
意向確認

次のいずれか
① 面談
② 書面交付
③ FAX
④ 電子メール等

40歳等情報提供次のすべて
① 制度の内容
② 制度の申出先
③ 給付金に関すること
次のいずれか
① 面談
② 書面交付
③ FAX
④ 電子メール等

<2025/10/1~ 育児に関する運用フローの取り組み内容>

対象者対応が必要な内容具体策
全体雇用環境整備次のいずれか
① 研修の実施
② 相談窓口の設置
③ 事例の収集・提供
④ 取得促進に関する方針の周知
妊娠・出産等の申出時周知

次のすべて
① 制度の内容
② 制度の申出先
③ 給付に関すること
④ 社会保険料の取り扱い

意向確認次のいずれか
① 面談
② 書面交付
③ FAX
④ 電子メール等
妊娠・出産等の申出時
 及び
3歳になる前
意向聴取次のすべて
① 勤務時間帯
② 勤務地
③ 制度等の利用期間
④ 就業の条件
次のいずれか
① 面談
② 書面交付
③ FAX
④ 電子メール等
配慮例)
・勤務時間帯、勤務地
・業務量
・制度の利用期間の見直し
・労働条件の見直し

(育児・介護休業に関する社内運用フローのワンポイント)
周知・意向確認・意向聴取・配慮の取り組み、厚生労働省の「参考様式」が参考になります。

参考様式:厚生労働省
    13-1 (妊娠・出産等申出時)個別周知・意向確認書、個別の意向聴取書記載例
    13-2 (育児休業)事例紹介、制度・方針周知ポスター例
    13-3 (子が3歳になる前)個別周知・意向確認書、個別の意向聴取書記載例
    13-4 (介護休業等)個別周知・意向確認書、40歳情報提供記載例
    13-5 (介護休業等)事例紹介、制度・方針周知ポスター例

ただ、少し文字が多めで取っつきにくい雰囲気は否めません。
パワーポイントなどで、「育児」「介護」毎に、制度や事例、意向聴取項目などを一つにまとめた資料などを用意しておくと、社内運用が簡単になります。
労務担当者は、是非ひと工夫してみてください。

ご参考までに、弊社ではご契約のお客様に、編集して使える以下のようなガイドを作成して無料配布し、周知・意向確認・意向聴取が少しでも楽になるようにお手伝いさせていただいております。

企業が注意すべきポイント

今回の法改正では、「努力義務」と「義務」が混在します。
「努力義務」に関しては、将来的に義務化される可能性はありますが、今すぐに難しい場合には、「義務」のみの対応に専念しましょう。

既に先進的な取り組みをされている会社は、「柔軟な働き方を実現するための措置等」を3つ以上導入する場合や「子の看護等休暇」を有給化する場合などには、令和7年度厚生労働省予算案で、両立支援等助成金が受給できる予定ですので、制度導入前に助成金の確認もしておきましょう。

参考:「令和7年度厚生労働省予算案の主要事項」

労働者からの質問・相談にどう対応するか?

厚生労働省から「令和6年改正育児介護休業法に関するQ&A(令和7年1月23日時点)」が公開されています。
事前に確認の上、質問・相談されそうなものはピックアップして準備しておくと良いでしょう。

育児休業取得状況の公表[300人超]は、具体的にはいつから公表義務があるのか?

公表前事業年度の終了後おおむね3か月以内となっていますが、この「事業年度」とは各企業の「決算時期」となります。
具体的には、2025年12月末決算の会社であれば2026年3月末まで。

注意が必要なのは、2025年1月から2025年3月決算の会社の場合には、4/1の法施行後すぐに公表義務が発生します。
具体的には、2025年3月末決算の会社であれば2025年6月末までに公表が必要になります。

具体的なスケジュールと対応の流れ

(2025年3月31日まで)育児介護休業規程及び労使協定の変更・届出
  >子の看護休暇
  >所定外労働の制限の対象拡大
  >介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
  >(努力義務)育児・介護のためのテレワーク導入

(2025年4月1日から)社内体制や運用フロー体制の整備
  >介護離職防止のための雇用環境整備
  >介護離職防止のための個別の周知・意向確認等

(2025年9月30日まで)育児介護休業規程の変更・届出
  >柔軟な働き方を実現するための措置等
  >仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮

(2025年10月1日から)社内体制や運用フロー体制の整備
  >柔軟な働き方を実現するための個別の周知・意向確認
  >仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮

(社労士に相談すべきタイミング)
今回の法改正では、2025年4月施行と10月施行にわかれますが、育児介護休業規程の変更だけであれば、どちらも難しくありません。
ただし、10月施行の「柔軟な働き方を実現するための措置等」は、今後の企業経営に重要な意思決定となりますので、どの選択をするかによっては企業の発展にも影響を及ぼすかもしれません。
こんな時は、社内の実情を知っている社労士がいると、心強いですね。

まとめ:スムーズな対応のために

(事前準備の重要性)
二度の改正タイミングによる就業規則の変更や社内運用フローの構築などのやるべきタスクが多くありますが、まずは自社がやらなければならないタスクの確認と、いつまでに対応する必要があるか確認しておきましょう。

(社労士との連携でスムーズに対応を)
他社はどのような取り組みをしているのか、自社はどのような働き方を選択することが最適か、様々な企業や業種を経験している社労士に相談することでスムーズに対応できます。
この機会に、社労士に一度相談することを検討してみましょう。

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