COLUMN
企業にとって、社員情報の適切な管理は非常に重要な業務です。現在も紙ベースでの管理が多く、とくに複数の支社や店舗を持つ企業では、手続きの煩雑さや管理の手間が大きな負担となっています。
この記事では、多拠点・店舗を展開する企業が抱える社員情報管理の課題や、システム導入によるメリットを解説します。
システム選定時の注意点もお伝えしますので、管理方法にお悩みの方はぜひお役立てください。
社員情報の管理は、大きく「人事管理」と「労務管理」の2つに分けられます。
ここでは、人事管理と労務管理について、具体的な役割の違いを説明します。
人事管理とは、採用活動や人材教育・評価など、個別の社員に対して行われる業務です。人事管理の主な役割は次のとおりです。
新卒・中途採用の選考や面接、内定者フォローなど
社員への社内教育・育成など
社員の評価制度の作成
社員の配属先や異動の決定
社員のモチベーション管理など
人事管理は直接人材に関わり、社員の成長をサポートし、適材適所で活躍できる環境を整える役割を担います。企業にとって社員の成長は企業の躍進に直結するため、育成や評価のデータを適切に記録・活用することが重要です。
労務管理とは、労働環境の整備や給与計算など、社員全体に対して行われる業務です。労務管理の主な役割は次のとおりです。
社員の基本情報(名前・生年月日・住所・マイナンバー)の管理など
残業時間や年次有給休暇などの勤怠管理
給与計算や給与明細書の発行など
就業規則の作成や変更など
入退職や扶養加入の社会保険の手続きなど
労務管理は社員の労働に関わり、社員が働きやすい環境を整える役割を担います。たとえば、長時間労働の防止策や社員要望を反映した就業規則の見直しなどが求められます。
そのほかにも、社員の基本情報や社会保険の加入・喪失など、法令に基づいた適切な管理や手続きも必要です。
社員情報の管理は扱う項目が多く、手続きが煩雑になりがちです。
とくに複数の支社や店舗が遠方にある企業は、やり取りの手間や時間がかかり、労務管理に悩みを抱えているのではないでしょうか。
ここでは、多拠点・店舗企業の労務管理における課題を見てみましょう。
社員やアルバイトの入社時には、氏名・生年月日、マイナンバーなどの基本情報に加え、雇用契約書・雇用保険被保険者番号など、さまざまな書類や情報を預かる必要があります。
複数の支社から郵送で書類を受け取る場合、到着までに時間がかかるうえ、提出漏れや紛失のリスクも高まります。
書類の不備があれば再提出を依頼する手間も発生し、社員と労務担当者の双方に負担がかかることも少なくありません。
紙ベースの申請書類は受け取るまでに時間がかかり、書類の保管スペースの確保や管理方法などの課題を抱えています。入社時だけでなく、働いている社員からも、扶養の加入や住所の変更など基本情報の変更申請が日々届きます。
とくに負担が大きいのが、年末調整時の書類の配布・回収作業です。
手書き書類の転記ミスや記入漏れが発生しやすく、修正の手間がかかることに加え、申告書は原則7年間保存義務があるため、膨大な書類を管理し続けなければなりません。
このように紙の書類が増えるほど、保管場所の確保や過去書類の検索の手間も大きな負担になります。
申請後の書類を確認するには、原本を保管している棚やファイルから探し出す必要があります。過去の書類を探す手間がかかり、必要な情報にすぐアクセスできません。
また、店舗や支店で管理する書類がある場合、管理方法が属人化しやすく、必要な書類をすぐに見つけられないケースも少なくありません。
コピーやPDFで本社と共有することも可能ですが、その都度担当者へ依頼する手間が発生し、業務が停滞してしまいます。
さまざまな課題を抱える社員情報の管理ですが、労務システムを導入することにより大幅に改善されます。
ここでは、システム化で解決するポイントを3つ紹介します。
紙ベースの申請書は、紛失リスクや保管場所の確保など多くの課題を抱えています。労務システムを導入することで、次のようなメリットがあります。
(社員のメリット)
使い慣れたスマホやパソコンから入力できる
添付書類を写真で提出できる(コピー不要)
雇用契約書などの重要書類をいつでもデータで確認できる
(企業のメリット)
情報が見える化され、入力や書類の抜け・漏れが確認しやすい
システム上で書類を閲覧できるため、いつでもどこでも確認可能
ペーパーレス化で、紙のコスト削減と労務担当者の業務時間の節約につながる
このように企業側のメリットだけでなく、社員側にも大きなメリットがあります。
社員は、手書きによる誤字や脱字の修正がなくなるので、スムーズに申請を進められるでしょう。
労務担当者は、書類を探す・ファイリングするなどの作業が不要になることで、大幅な負担軽減につながります。経費面でも、紙の用紙代・印刷代のコスト削減や保管スペースの効率的な活用が可能になります。
企業は、社員情報を適切に管理する必要があります。なかでも「労働者名簿」は、労働基準法で義務付けられているため、作成・保存は必須です。
アナログな作業だと、履歴書から労働者名簿へ転記する作業が必要でしたが、労務システムを導入することで原則不要になります。
さらに、システムによっては本人が直接入力したものがそのまま反映されるため、労務担当者の大幅な負担軽減につながります。名前の読み方や漢字の変換ミスなどを防止できる点も魅力的な要素といえるでしょう。
複数の支社や店舗がある企業は、拠点ごとに書類の管理方法が異なることが少なくありません。管理が統一されていないと、書類を探す手間や紛失、さらには情報漏えいのリスクも抱えてしまいます。
労務システムを導入することで、情報がシステム上で一元化され、検索性とセキュリティ面の大幅な改善が期待できます。基本情報に加え、給与や勤怠・社会保険の情報なども一つのシステムで管理できるため、情報の整合性を保ちやすくなるでしょう。
企業・社員の双方にとって大きなメリットがある労務管理のシステムですが、導入は慎重に行う必要があります。
ここでは、システム導入時におさえておきたい3つの注意点を紹介します。
労務管理システムを導入する前に、まずは現在抱えている課題を洗い出し、システム化で解決するかを明確にしておきましょう。
労務管理システムは多くの企業がリリースしているため、選定基準として課題をしっかりと認識しておくことが不可欠です。企業の課題を把握し、解決できるシステムを選びましょう。
導入目的に沿ったシステムをリサーチができたら、複数のシステムをリストアップしておきましょう。
使いやすい操作画面か・長期的なコスト面は問題ないか・豊富すぎる機能で無駄にならないかなど、さまざまな視点で各システムを見比べてみるのが選定のコツです。
現在使っているシステムと連携する可能性がある場合は、互換性があるかを確認しておきましょう。
たとえば、勤怠管理システムは「KING OF TIME」や「freee勤怠管理Plus」を使用していて、労務管理はまだシステム化していない場合、導入予定の労務管理システムと勤怠管理システムが連携できるか製品ページで確認する必要があります。
他システム同士の連携ができれば、広範囲の業務効率化が期待できます。
社員情報の管理は、労働関連の法令を遵守しながら適切に行う必要がある重要な業務です。なかでも労務管理は幅広く複雑でありながら、いまだにアナログな作業が多く、複数の支店や店舗がある企業にとって大きな課題となっています。
本記事で紹介したように、労務システムを活用することで、ペーパーレス化や転記作業の削減・情報の一元管理が実現し、企業と社員の双方にとって大きなメリットがあります。
システム導入を検討する際は、自社の課題を整理し、最適なシステムを選びましょう。
あかつき社会保険労務士法人では、お客様の業種や企業規模・ご希望に沿ったシステム選定や制度導入を支援しています。
「システム導入が初めてで選び方が分からない」「システム会社への問い合わせだと、都合の良いことしか教えてくれない」「どのシステムが自社に最適かわからない」といったお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
残念ながら、どんな業界でも、どんな働き方にも対応できるシステムはまだ登場していません。
勤怠システムや給与計算システム、労務管理システムのそれぞれの長所を組み合わせながら、システムが対応できない場合には、時には自社の制度やルールも変える必要があります。
そんなときには、是非クラウドシステムの運用に強みをもった社労士にご相談ください。
まずはオンラインでヒアリングを実施します。お問い合わせフォームより、ご連絡をお待ちしております。