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COLUMN

退職金として使える制度

シリーズ:あかつき退職金研究所(2)

退職金制度を考える際に、いくつかの制度を理解しておく必要があります。これらの制度を理解し、自社に合った制度・経営者の想いに叶う制度を選択していただければと思います。
退職金制度を大きく3つに分類すると「退職一時金制度」「退職金共済制度」「企業年金制度」になります。

退職一時金制度・・・「社内準備型」「生命保険」等
退職金共済制度・・・「中小企業退職金共済」「特定退職金共済」「小規模企業共済」等
企業年金制度・・・「厚生年金基金」「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金」「iDeCo+」等

「退職一時金制度」について

退職金規程に定められた額を、退職者が出たタイミングで支払います。歴史の長い企業の退職金制度は「社内準備型」が多いかもしれません。「社内準備型」は、退職者がいつ出るかを考えて計画し、内部留保しておくことになり債務を負います。さらに、その資金の積立時は損金算入できず、税制面でもメリットがほとんどありません。そのため制度継続が困難という企業も多いでしょう。

また、「生命保険」を退職金として活用すれば一定の割合を損金算入可能ですが、万全とは言えません。法人税がかかってしまうくらいなら退職者が出る直前に急いで資金繰りをする方が、コスト的には良いのかもしれませんし、退職者が出る度に資金繰りに奔走するのも大変です。定年退職者が多く出た年は、決算にも影響しかねるため悩ましい限りです。

「退職金共済制度」について

「退職金共済制度」は「一定規模以下の中小企業でなければ加入できない」等、加入要件が決められていたり、利用制限があるのが特徴です。
皆さんよくご存じの「中小企業退職金共済」いわゆる「中退共」や「建設業退職金共済」「清酒製造業退職金共済」「林業退職金共済」等は中小企業退職金共済法により、国が作った退職金制度です。
また、小規模企業の経営者・役員・個人事業主等のための「小規模企業共済」や、商工会議所の「特定退職金共済」いわゆる「特退共」があります。

注意点もいくつか押さえておく必要があります。例えば、スタートアップ企業が「中退共」を利用し、企業が成長して一定規模を超えた場合、契約解除が必要になります。また、退職者が出た場合は、退職者が直接共済に請求を行う必要があります。一方で、経常費用がなく運用や管理も共済にお任せできる点は安心です。

「企業年金制度」について

「企業年金制度」は公的年金に上乗せして任意加入する私的年金のことで、年金の3階部分にあたり、差し押さえの対象外です。
拠出額や経常費用は全額損金扱いが可能で、この拠出額は社会保険料の対象外となるため、法定福利費もかかりません。さらに、運用益も非課税で、受取時は「一時金受取」「年金受取」を選択できます。
一時金受取の場合は退職所得控除の対象、年金受取の場合は公的年金等控除の対象となります。このように優れた税制優遇がある点が特徴です。

「企業年金制度」の代表的な2つの制度

確定給付企業年金企業型確定拠出年金
  • 基金型
  • 規約型
  • 選択制
  • 上乗せ支給
  • 選択制+上乗せ支給
  • マッチング拠出

確定給付企業年金

「確定給付企業年金」は、労使合意のもと退職後の給付額をあらかじめ約束し、企業が拠出する年金制度です。給付額は資産運用の結果問わず、企業が退職金債務を負います。

また、「基金型」と「規約型」の2種類があります。
「基金型」は、企業が厚生労働大臣の認可を受けて企業年金基金を設立し、運用・管理を行います。
「規約型」は、労使合意の年金規約を企業が作成し、企業年金基金の設立ではなく、生命保険会社や信託会社に運用を任せることが可能です。ただし、管理は企業が行います。

企業型確定拠出年金

「企業型確定拠出年金」は、企業が拠出した掛金とその運用益との合計額をもとに、将来の給付額が決定する年金制度です。企業は最終的な給付額を約束するのではなく、毎月の掛金を保証するため、退職金債務は負いません。

また、4つの制度設計が可能です。
「選択制」は給与を分割し、その一部を掛金とする設計が可能です。つまり、「その枠内で将来受け取る退職金として積み立てるもよし、前払い退職金として今受け取るもよし」の選択ができる設計です。さらに「選択制」の場合、掛金は社会保険料の対象外です。その他にも、給与に上乗せして支給する「上乗せ支給」や、ハイブリット型の「選択制+上乗せ支給」、自身の拠出部分は全額所得控除(社会保険料の対象)となる「マッチング拠出」があります。

まとめ

こうした多様な制度の中から、自社にあった退職金制度を考えていくことになります。
制度によっては併用できたり、資産の移換が可能なものもあります。もし、以前から運用されている退職金制度が、すでに今の時代・会社経営に合わないものになっているのであれば、早々に見直しをかけましょう。