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ストレスチェックが50人未満の企業にも拡大へ|中小企業が今から準備すべき対応を社労士が解説

現在、常時50人以上の事業場で実施が義務付けられている「ストレスチェック制度」ですが、政府は2028年頃に50人未満の事業場にも対象を拡大する方針を示しています。
そのため、50人未満の事業場が十分に制度を理解しないまま、または体制が整わないまま義務化を迎えると、運用上のトラブルにつながる可能性があります。

この記事では、ストレスチェックの義務化について、社労士がわかりやすく解説します。

・義務化の変更点と拡大の背景
・制度の目的と実施の流れ
・ストレスチェック活用のメリットと事例
・中小企業が今から整えておくべき準備

「ストレスチェックの流れが知りたい」「運用方法を把握しておきたい」と考える労務担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

ストレスチェックは2028年頃に義務化予定

政府は、2028年頃を目安にすべての企業をストレスチェック制度の対象として拡大する方針を示しています。

ここでは、制度変更のポイントとその背景を解説します。

義務化による変更ポイント

今回の見直しでは、次が主な変更のポイントとなります。

  施行日予定   : 2028年頃に義務化予定

 対象企業の拡大  : 常時使用する従業員50人未満の事業場も対象へ

面接指導体制の強化 : 地域産業保健センターの支援が拡充予定

ストレスチェックの義務化は「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」が成立し、2025年5月14日に公布されました。公布から3年以内に施行されるため、2028年頃にはすべての企業で義務化となる見込みです。

常時使用する従業員には、正社員だけでなく、一定時間以上働くパートタイムなどの非正規労働者も含まれます。
なお、派遣社員については、原則として派遣元企業が実施義務を負いますが、職場全体の状況把握のため派遣先での実施も可能です。

また、小規模事業場への円滑な導入を図るため、地域産業保健センターなどによる面接指導の支援体制も強化される見込みです。これにより、制度運用の負担を抑えつつ、従業員のメンタルヘルス対策を効果的に実施できる体制が整います。

義務化拡大の背景:メンタル不調人数の増加

ストレスチェック制度の定着には、企業規模により大きな偏りが見られます。

厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」の概況」によると、50人以上の事業場では91.3%がメンタルヘルス対策を実施しているのに対し、30~49人規模では71.8%、10~29人規模では56.6%にとどまっています。

ストレスチェックそのものの実施率にも格差があり、50人以上の事業場での実施率は81.9%に対し、努力義務の50人未満では33.2~41.7%しか実施されていません。

一方で、精神障害による労災認定件数は、令和6年度で1,055件と過去最多を記録しており、長期休業や退職に至る従業員も増加傾向にあります。

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引用:厚生労働省「令和6年度過労死等の労災補償状況

このような状況により、国は2023年に策定した第14次労働災害防止計画において、2027年を目標年度とし、次のような数値目標を掲げています。

・メンタルヘルス対策を行う事業場の割合を80%以上

・50人未満の小規模事業場のストレスチェック実施率を 50%以上

参考:厚生労働省「第14次労働災害防止計画の概要

これらの取り組みを加速させるべく、制度の義務化拡大と支援体制の強化が重要視されています。

ストレスチェックの目的と仕組み

2015年に導入されたストレスチェック制度ですが、実施が努力義務である50人未満の事業場では、まだ十分に浸透していない面もみられます。

ここでは、制度の目的や実施の流れと手順、活用方法などについて解説します。

制度の目的

ストレスチェック制度とは、従業員が自身のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための仕組みです。

制度の導入目的は大きく 「個人のセルフケア促進」 と 「職場環境の改善」 の2点です。

まず、自分の心身の不調を早期発見することで、負担の軽減や医師の面接指導につながり、重症化を防ぐことが目的とされています。また、集団分析を通じて職場の構造的な課題を洗い出すことで、配置・業務量・コミュニケーション体制など、組織としての改善策を検討できる点もストレスチェック制度の特徴です。

ストレスは自覚しにくく、とくに高ストレス者ほど気づかないまま働き続けてしまうケースも少なくありません。
定期的なチェックを行うことで、個人と組織の双方からメンタルヘルス対策を進めることが目的とされています。

実施の流れと手順

ストレスチェックは「準備→実施→通知・面接→保存・分析」という大きく4つのステップで進めていきます。

担当者や扱う情報の範囲が異なるため、企業として正確に役割を整理しておくことが重要です。

【Step1】導入準備(担当:事業者)

まず、制度を社内で運用するための準備を行います。

医師・保健師など実施者の選任、質問票・評価基準・実施時期、面接指導の担当医、結果の保管方法などを明確にし、社内へ周知します。

なお、人事権を持つ社長や専務、人事部長などは、不利益な取扱いができないようにするため実施者・事務従事者になれません。

【Step2】ストレスチェックの実施(担当:実施者等)

準備が整ったら、質問票にもとづき紙またはWebにてストレスチェックを実施します。

実施にあたっては、産業医などの「実施者」を中心とし、調査票の配布・回収やデータ管理などを担当する「実施事務従事者」の選定が可能です。

実施事務従事者に資格要件はなく、衛生管理者や人事課の従業員が補助役として担当することが一般的です。

【Step3】結果の通知および面接指導(担当:実施者→従業員)

実施者は回答内容を評価し、従業員へ個別に結果を通知します。

高ストレスと判定された場合、本人の申し出により医師面接が実施され、事業者は配置転換・業務調整などの就業上の措置を検討します。

なお、事業者に個人の結果は通知されず、本人同意の場合のみ入手することが可能です。

【Step4】結果の保存・集団分析等(担当:実施者)

結果は紙またはデータで5年間保存します。

また、部署単位などで集団分析を行い、ストレス傾向を把握したうえで、職場環境改善の取り組みに活かすことが望まれます。

結果の活用と報告義務

ストレスチェックの結果は、個々の従業員のセルフケアや面接指導に活用されるだけでなく、職場環境の改善にも活かせます。

高ストレス者や医師が面接を推奨した従業員に対しては、本人の申し出を受けて面接指導が行われます。面接指導の結果をふまえて、配置転換・休職・労働時間の調整などの職場環境改善措置を講じる必要があります。

また、個人情報が特定されない範囲で部署や課ごとの結果を分析することで、職場全体のストレス傾向を把握できます。分析結果は、作業負荷の調整や業務フローの改善といった具体的な取り組みに活かされ、企業の努力義務として位置付けられています。

なお、現時点で50人以上の従業員を使用する事業場では、ストレスチェックの実施状況である「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を労働基準監督署に報告する義務があります。報告書は直接提出か郵送、または電子申請にて行います。

報告を怠ると罰金が課される場合もあるため、実施後は速やかに書面またはオンラインで提出しましょう。

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【事例あり】ストレスチェックを実施する3つのメリット

ストレスチェックの実施と活用は、従業員の健康保持にくわえて、組織運営や業績面にも良い影響をもたらします。

ここでは、その3つのメリットと50人未満の事業場が取り組む事例を解説します。

メンタル不調による休職・離職を防げる

従業員のメンタルヘルス不調は、休職や離職につながる可能性が高く、中小企業にとって業務負担の偏りや人員補充の難しさといった影響が大きくなります。

そのため、従業員が自らストレスに気づき、早期に相談・対処できる環境づくりが重要です。

事例:株式会社愛幸

従業員数40名の株式会社愛幸では、「健康経営」の一環としてストレスチェックと相談体制の整備を継続的に行っています。次の取り組みにより、社外も含めて相談・フォローの導線が設定されています。

・従業員が利用できる健康経営サービスの電話相談窓口と契約
・上司との1on1、社長面談、社内イベントなどで「話しやすい関係性」を構築
・個別状況に応じた業務量調整・配置転換が可能な体制

あわせて、オフィス環境の改善や福利厚生の拡充、年間休日数を増やすなど進めた結果、離職率は15%→3%へ大幅に改善されました。
従業員が「ここで働き続けたい」と思える環境づくりこそが、中小企業における人材戦略といえます。

参考:厚生労働省「こころの耳 職場のメンタルヘルス対策の取組事例

職場環境の課題を把握・改善できる

ストレスチェックでは、部署・職種・勤務形態ごとの傾向を数値化し、職場環境の課題を可視化することができます。

「忙しい部署に高ストレスが集中している」「コミュニケーションの不足が心理的負荷になっている」など、 感覚ではなくデータで判断できるため、改善策の検討に説得力が生まれます。

事例:株式会社コー・ワークス

従業員数26名の株式会社コー・ワークスでは、2019年から自主的にストレスチェックを導入し、外部の公認心理師と連携して支援体制を充実させています。次の取り組みにより、数値と従業員の声の両面から課題を抽出できる仕組みを構築しました。

・自社に合った分析機能付きのストレスチェックサービスを選定
・年2回のストレスチェックと年1回の従業員面談で課題を可視化
・公認心理師による職場環境改善の助言を取り入れる

こうした継続的な取り組みにより、コミュニケーション機会の見直し・制度整備・評価の再構築といった具体的な改善につながり、社内意識にも変化が生まれています。
さらに、メンタルヘルスに関するコラムと自由記述欄の配信を毎月行うことで、相談へのハードルを下げる工夫もされています。

参考:厚生労働省「こころの耳 職場のメンタルヘルス対策の取組事例

結果を活用し業績向上へつなげる

ストレスチェックの結果を施策に反映することで、生産性向上・離職防止・業績拡大といった経営面の成果にもつながります。

とくに組織規模の小さい企業ほど、一人ひとりの状態が事業に与える影響が大きいため、結果を活用した改善サイクルが効果を発揮します。

事例:株式会社マルケイ

従業員16名の株式会社マルケイでは、2022年より自主的にストレスチェックを導入し、外部機関に委託して年1回の実施体制を整えています。次の取り組みにより、従業員の心身の健康を守っています。

・ストレスチェック受検率100%の維持
・管理職研修の導入で2023→2024年で高ストレス者の割合が改善
・集団分析結果を踏まえたコミュニケーション改善施策の推進

このような施策や週休二日制の導入により従業員の働き方の意識が向上し、2025年の取材時点で「最高益見込み」といった成果にも結びついています。

参考:厚生労働省「こころの耳 職場のメンタルヘルス対策の取組事例

50人未満の企業が今から取り組む準備

2028年頃の義務化が始まる前に、どのような準備を進めておくか押さえておく必要があります。

ここでは、従業員50人未満の事業場がストレスチェック制度を進めるうえで、整理しておきたい実施方法の選び方や体制づくりのポイントを解説します。

自社か外部どちらで実施するか

ストレスチェックは「自社で行う」または「外部に委託する」の2つの実施方法があります。

とくに小規模企業が自社で行う場合、プライバシー保護の観点や従業員が本音で回答しづらくなるため、どちらにするか慎重に選定する必要があります。
外部委託を選ぶ際には、次のようなポイントを踏まえて検討しましょう。

・法令や制度への理解が十分か
一次予防が目的であること、結果を本人の同意なく事業者へ提供できないこと、守秘義務が課されていること、制度の根幹部分を正しく理解しているかなど

・実施体制が整っているか
資格を有する実施者など必要な専門職が明確で、問い合わせにも対応できる仕組みがあるか

・調査票・評価方法が法令に準拠しているか
57項目または23項目の調査票、評価基準、高ストレス者の判定基準が適切であり、科学的根拠があるか

・情報管理体制が万全か
第三者認証の取得、データ管理システムの安全性、結果の保存が行われる管理の仕組みがあるか

・面接指導まで適切につなげられるか
高ストレス者への面接勧奨、医師面談の手配、緊急時の対応フローが整備されているか

参考:厚生労働省「外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト例

実施体制を整備する

ストレスチェックの最終責任は事業者にあります。

そのため、社内で実施の流れと担当者を明確にしておく必要があります。
まずは次の事項をあらかじめ決めておきましょう。

  • 実施の時期・頻度
  • 実施事務従事者や外部委託先との窓口担当
  • 使用する質問票・回答形式(紙・Webなど)
  • 高ストレス者の判定基準
  • 面接指導の申し出先・進め方

判断に迷う場合は、従業員50人未満の事業場を支援する地域産業保健センターに無料で相談することができます。

方針を決めたら文書化し、従業員が安心して受検できるよう丁寧な案内と環境を整えましょう。

面接指導や職場改善への仕組みづくり

ストレスチェックを実施する際には、面接指導の体制づくりや、結果をどのように活用するのかが重要なポイントになります。

詳細を確認しておきましょう。

【面接指導の体制づくり】

  • 高ストレス者から申し出があった際、すぐ医師につなげられる窓口や手順を決めておく
  • 産業医がいない企業は地域産業保健センター・医師会・産業医紹介サービスを利用する
  • 50人未満の事業場は産業医の選任義務がないため、必要な時だけ医師へ依頼できるスポット契約も検討する

【集団分析と職場改善への活用】

  • ストレスの要因を把握するため、部署・職種別などの集団分析を活用する
  • 50人未満の集団分析は個人が特定されやすいため、10人以上のまとまりになるよう分析単位を工夫する
  • 分析結果は、長時間労働・人間関係・役割の不明確さなど、改善が必要な領域の特定に活かす

まとめ

ストレスチェック制度の拡大は、50人未満の事業場にとって義務対応だけでなく、離職防止や職場改善、生産性向上につなげる大きなチャンスでもあります。

自社で実施するか外部へ委託するかを早めに検討し、情報管理・面接指導の体制整備、集団分析を踏まえた改善の仕組みづくりを進めておくことが重要です。

制度を正しく運用することで、従業員が安心して働ける環境を整え、組織としての持続的な成長にもつなげましょう。

ストレスチェック制度は社労士が法令・労務面からフォローします

あかつき社会保険労務士法人は、ストレスチェック制度を導入・運用中の企業に対し、労働安全衛生法の観点や労務管理の実務面から、安心して制度を進められるようフォローすることが可能です。

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