COLUMN
社労士の存在意義とは何だろう?常々考えています。全国社会保険労務士会連合会のページにある、「社労士とは」というページには、
企業の成長には、お金、モノ、人材が必要とされておりますが、社労士はその中でも人材に関する専門家であり、「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」を目的として、業務を行っております。
社労士は、企業における採用から退職までの「労働・社会保険に関する諸問題」や「年金の相談」に応じるなど、業務の内容は広範囲にわたります。
職場や企業の悩みは、人を大切にする企業づくりの支援をしている、社労士にお任せください。
とあります。続いて社労士の主な業務には
●労働社会保険手続き業務
複雑・多岐にわたる労働社会保険の諸手続きを、皆さまに代わって、円滑かつ的確に行います。
●労務管理の相談指導業務
良好な労使関係を維持するためや、労働者の皆さまが納得して能力を発揮できるようにするため、職場にあったきめ細やかなアドバイスを行います。
●年金相談業務
複雑な年金制度をどなたにも分かりやすく説明し、必要に応じて各種事務手続きをお手伝いします。
●紛争解決手続き代理業務
裁判ではなく、「あっせん」という手続きにより、簡易、迅速、低廉に解決します。
●補佐人の業務
相談の段階からお手伝いしていた社労士が、補佐人として弁護士と共に訴訟の対応にあたることで、安心して訴訟による解決を選択することができます。
とありました(2019年5月3日現在)。
もちろんその通りです。これが社会保険労務士法に基づいた国家資格者としての社労士の仕事です。でも日々、このままでよいのだろうか、これでは足りないのではないだろうかと自問自答してしまうのです。
というのも、労働社会保険手続き業務や年金手続き業務はどんどん電子化やツールの進化が進み、そのうち社労士が不要になる仕事だろうと思います。そして紛争解決手続き代理業務や補佐人の業務については、本当に良い組織をつくろうとしている企業経営者にとっては、それほど頻繁には必要に迫られないだろうとも思うのです。
そうなると残るは「労務管理の相談指導業務」ということになります。労働法に照らした「労務管理のあるべき姿」は、多くの経営者の方々に求められます。今やインターネットで何でも調べられる世の中ではあるのですが、「解釈まではわからない」「どの解釈が正しいのか判断がつかない」と言われる方が多いので、「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与」する仕事は、まさに社労士ならではのニーズを感じる仕事です。
でも、これもまた悩ましいのです。「法的解釈だけを伝えていれば、それで『事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること』になるだろうか」と考えてしまうのです。
『事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上』というと、そこはやはり法的解釈を超えた相談=コンサルティングの領域です。しかも、人事にまつわるコンサルティングだと言えるでしょう。ここで言うコンサルティングが「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与」に該当する相談業務とどこが異なるかというと、正解のない「問題解決」を含むことなのではないでしょうか。
法的な解釈であれば、正解は限りなく絞り込まれます。「それでは法に反しますので、こうしてください」という相談・指導になるわけですが、「よりよい経営のための組織の在り方」には、唯一無二の正解はなさそうです。ここは、多岐にわたる知識と経験、実行力に説得力にと、いろいろな力が試されることになり、社労士法人として「労働法」との整合性ももちろん期待され続けるわけです。あかつきが今、「労働法×システム×オペレーション」を掲げているのは、こうした理由から、というわけです。
これからの会社の事業の発展を長く支えられる社労士であるためには、コンサルティング力が必須だと考えています。裏を返せば、これからの社労士の選び方としては、コンサルティング力を判断材料にしたほうがよい、ということかもしれません。
社労士は“手続き業務の実務家”“法的解釈の伝達者”であることが多く、コンサルティングは実は少し苦手かもしれません。これからの時代に合う事業の発展のために、社労士に何を求めるのか。事業とその人事に関わる相談相手として、何を一番重視するのか。そんなことを考えていただくきっかになれば幸いです。