COLUMN

協会けんぽでは、2026年1月13日から各種手続きをオンラインで行える電子申請サービスが開始されました。これにより、従来は紙で行っていた申請の一部が電子化され、利便性の向上や事務負担の軽減が期待されています。
この記事では、協会けんぽの電子申請について、対象となる申請手続きや流れに加えて、労務担当者が押さえておきたい対応ポイントを社労士がわかりやすく解説します。
電子申請の導入を検討している労務担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
Point💡 ・申請主体が被保険者本人となるため、企業側での把握・管理が難しくなる ・電子申請開始に向けて、従業員への周知や社内運用の整理が必要になる |
.
協会けんぽは、2026年1月13日よりこれまで紙の申請書で行っていた健康保険の各種手続きを、インターネット上で申請できる「電子申請サービス」を開始しました。
電子申請は、政府が進めるデジタル化の流れを受けて導入されるもので、加入者や事業者の負担軽減、事務手続きの効率化が目的です。郵送にかかる手間や時間、切手代といったコストを削減できる点は、企業にとっても大きなメリットといえるでしょう。
サービスの利用方法は、次のとおりです。
利用環境 :パソコン・スマートフォン・タブレットから申請可能
利用時間 :平日8時〜21時
利用不可日:土日祝日、年末年始(12月29日〜1月3日)
電子申請では、各種手当金や医療費の払い戻し、退職後の任意継続に関する一部の手続きについて、オンラインでの申請が可能となっています。
対象となる31種類の申請書を、申請者別にまとめました。
| No | 申請書名 | 手続きの概要 |
| 1 | 傷病手当金支給申請書 | 病気やケガで休業した期間の生活保障 |
| 2 | 出産手当金支給申請書 | 出産のために休業した期間の生活保障 |
| 3 | 出産育児一時金支給申請書 | 出産費用の補助として支給される一時金 |
| 4 | 出産育児一時金内払金支払依頼書 | 出産費用を医療機関へ直接支払うための手続き |
| 5 | 埋葬料(費)支給申請書 | 被保険者や被扶養者が死亡した場合の葬祭費用の給付 |
| 6 | 療養費支給申請書(立替払等) | 医療費を全額自己負担した場合の払い戻し |
| 7 | 療養費支給申請書(治療用装具) | コルセット等の治療用装具代の払い戻し |
| 8 | 高額療養費支給申請書 | 医療費が自己負担限度額を超えた場合の払い戻し |
| 9 | 海外療養費支給申請書 | 海外滞在中に受診した医療費の払い戻し |
| 10 | 移送費支給申請書 | 緊急搬送や転院時の移送費用の給付 |
| 11 | 高額介護合算療養費支給申請書兼自己負担額証明書交付申請書 | 医療・介護の自己負担額を合算して精算する場合 |
| 12 | 年間の高額療養費支給申請書 | 年間の自己負担額が上限を超えた場合の給付 |
| 13 | 年間の高額療養費自己負担額証明書交付申請書 | 他制度で使用する自己負担額証明の取得 |
| 14 | 限度額適用認定申請書 | 窓口での支払額を自己負担限度額までにおさえる場合 |
| 15 | 限度額適用・標準負担額減額認定申請書 | 医療費の限度額と入院時食事代の減額を受ける場合 |
| 16 | 特定疾病療養受療証交付申請書 | 人工透析など高額な治療を継続する場合 |
| 17 | 任意継続被保険者 資格取得申出書 | 退職後も健康保険の加入を継続する |
| 18 | 高額医療費貸付金貸付申込書 | 高額療養費の支給前に費用を借りる |
| 19 | 出産費貸付金貸付申込書 | 出産育児一時金の支給前に費用を借りる |
| 20 | 高齢受給者基準収入額適用申請書(新規判定用) | 70〜74歳の被保険者の自己負担割合を判定するための申請 |
| 21 | 高齢受給者基準収入額適用申請書(定期判定用) | 定期的に自己負担割合を見直すための申請 |
| No | 申請書名 | 手続きの概要 |
| 22 | 特定健康診査受診券(セット券)申請書 | 40〜74歳の被扶養者で生活習慣病に着目した検査を受ける場合 |
| 23 | 特定保健指導利用券申請書 | 特定健康診査の結果に基づいた保健指導を受ける場合 |
| No | 申請書名 | 手続きの概要 |
| – | 一定の要件を満たす場合、被保険者と同じくNo.3〜16、18〜21が申請可能 | |
| 24 | 資格確認書交付申請書 | 保険証等が使用できない場合の資格確認 |
| 25 | 高齢受給者証再交付申請書 | 高齢受給者証を紛失・破損した場合 |
| 26 | 任意継続被保険者 資格喪失申出書 | 再就職等により任意継続を終了する |
| 27 | 任意継続被保険者 氏名・生年月日・性別・住所・電話番号変更(訂正)届 | 登録情報に変更があった場合 |
| 28 | 任意継続被保険者 保険料納付遅延理由申出書 | 保険料の納付が遅れた理由を届け出る |
| 29 | 任意継続被保険者 被扶養者(異動)届 | 扶養家族を追加・削除する場合 |
| 30 | 任意継続被扶養者 変更(訂正)届 | 扶養家族の登録情報に変更があった場合 |
| 31 | 健康保険法第118条第1項該当・非該当届 | 少年院、刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に収容されたまたは該当しなくなったとき |
.
一見すると個人の手続きが中心に見えますが、対象範囲は広く、実際には労務担当者の説明が必要となる場面も少なくありません。
なお、今回新たに始まるのは、協会けんぽが提供する「電子申請」です。
従来から電子申請として運用されているe-Gov(資格取得・喪失届などの事業主手続き)とは、仕組みや対象手続きが異なります。
| 協会けんぽの電子申請 | e-Gov電子申請 | |
| 主な利用者 | 被保険者本人・家族・社労士 | 事業主・社労士 |
| 認証方法 | マイナンバーカード | eビズID・電子証明書 |
| 主な手続き | 傷病手当金や医療費の申請など個人単位 | 従業員の資格取得・喪失など事業所単位 |
電子申請を利用できる対象者は、次のとおりです。
・被保険者(本人)
・被扶養者(家族)
・社労士
電子申請は、被保険者本人が自ら手続きを行うことを基本とした仕組みであり、企業の担当者は申請の当事者にはなりません。特定健康診査や保健指導など一部の手続きについては、被扶養者(家族)も利用可能です。
一方で、申請状況や不備の有無を企業側で把握しづらくなる点には注意が必要です。
とくに傷病手当金や出産手当金は、休業期間中の生活費を補償する重要な給付であり、申請の遅れや不備があると支給時期が後ろ倒しになるおそれがあります。
申請は本人が行う仕組みであっても、会社として一定の把握やフォローが必要となる点には押さえておきましょう。
電子申請を行う場合、次の準備が必要です。
・マイナンバーカード
・マイナポータルアプリのダウンロード
・医師の証明書や領収書などを画像データへ変換
・けんぽアプリのダウンロード(任意)※2026年1月下旬以降
利用時には本人確認として「マイナンバーカード」が必須です。あわせて資格情報を取得するため、「マイナポータルアプリ」の利用が前提となります。
実際の申請は、協会けんぽのホームページやけんぽアプリより提出することができるので、医師の証明書や領収書などの添付書類は、事前に撮影して画像データとして準備しておくと手続きがスムーズです。
※けんぽアプリは2026年1月下旬にリリース予定です。

電子申請の大きな流れは、次のとおりです。
1.ログイン |
2.申請書を選択 |
3.必須事項を入力・添付 |
| 4.申請完了 内容を確認して送信すれば、申請は完了。 |
申請後は、画面上で「審査中」「審査完了」「返戻」などの進捗をリアルタイムで確認できます。ただし、最終的な審査結果は電子データではなく、従来通り書面で郵送される点に留意しましょう。
なお、内容に不備があった場合は、郵送での案内にくわえ、電子申請サイト内の電子ポストにデータが返却されるため、そのデータを修正すると再申請が可能です。
電子申請の開始にあたり、労務担当者は次の点を意識しておくとよいでしょう。
・電子申請で「従業員が自分でできること」と「企業が関与するケース」を整理する
・申請方法や注意点を把握し、質問があった際に説明できる体制を整える
・電子申請を前提とした社内の案内方法を検討する
・紙での運用を続ける手続きとの整理・切り分けを行う
・申請手続きの流れを顧問社労士と共有しておく
電子申請の導入により、手続きの主体は従業員本人へと移ります。
一方で、労務担当者には「制度の案内役」としての役割が求められます。事前に整理しておき、スムーズな導入を目指しましょう。
.
協会けんぽの電子申請サービスは、2026年1月13日から始まり、各種手当金や医療費の払い戻し、退職後の任意継続の手続きなど、これまで紙で行っていた申請の一部がオンラインで可能になります。
申請は主に被保険者本人が行う仕組みのため、事務負担の軽減が期待される一方、申請状況を企業側で把握しにくくなる点には注意が必要です。
労務担当者は、次の従業員へ説明すべきポイントを中心に、社内への案内を整えておきましょう。
1.申請主体が「本人」になること
療養費など一部の書類は会社を通さず、従業員自身でスマホ等から手続きができる
2.事前の準備物
マイナンバーカードやマイナポータルアプリが必要になる点
3.会社への報告
申請状況を把握するため、手続き後に会社へ報告してもらう等の運用ルール
あかつき社会保険労務士法人は、協会けんぽの電子申請開始に伴う実務対応や、社内フローの整理・従業員向け案内の整備をサポートしております。
次のお悩みに1つでもチェックが入りましたら、お気軽にご相談ください。
電子申請の対象手続きが想像以上に多く、自社で把握しきれていないと感じる
申請漏れや進捗状況を企業が把握できなくなることに不安がある
従業員に任せる範囲と企業がフォローすべきポイントが明確になっていない
まずはオンラインで無料ヒアリングを実施いたします。
お問い合わせフォームより、ご連絡をお待ちしております。