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【2026年版】算定基礎届と月額変更届の優先順位は?同時提出や判断方法を社労士が解説

算定基礎届と月額変更届は、どちらも社会保険料の基準となる「標準報酬月額」を決定する重要な手続きです。
4〜6月に昇給や手当変更があった場合には、「どちらを優先するのか」「同時に提出できるのか」と判断に迷うケースも少なくありません。

この記事では、算定基礎届と月額変更届の違いや優先順位、実務で迷いやすいケース別の判断ポイントを社労士がわかりやすく解説します。
社会保険手続きでミスを防ぎたい労務担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

 Point💡
 ・算定基礎届と年度更新は、目的・対象・提出先がまったく異なる手続き

 ・実施時期が重なるため、混同によるミスや申告漏れが起こりやすい

 ・提出期限の遅れや記載誤りは、罰金・追徴金などのペナルティにつながる

算定基礎届と月額変更届の違い

算定基礎届と月額変更届は、いずれも標準報酬月額を決定するための手続きですが、役割や提出タイミングは異なります。
特に、4〜6月に昇給や手当変更があった場合は、どちらの届出が必要になるのか迷いやすいため、それぞれの違いを整理しておくことが重要です。

 

算定基礎届(定時決定)

月額変更届(随時改定)

目的

実際の報酬と標準報酬月額の差を解消する

固定的賃金の変動に伴い、報酬が大幅に変わった際に標準報酬月額を改定する

提出頻度

毎年1回

随時

対象者

原則として7月1日時点の被保険者

固定的賃金に変動があり、2等級以上の差が生じる等の条件を満たす者

条件

給与変動の有無に関わらず、7月1日時点の対象者分を提出する

以下条件すべてを満たす場合

①固定的賃金に変更があった
②変動月以後3か月間の報酬平均と従前で2等級以上の差が生じた
③3か月とも支払基礎日数が規定以上ある

計算方法

4月・5月・6月の3か月間に受けた報酬の平均額

固定的賃金が変わった月以降の継続した3か月間の報酬の平均額

提出時期

毎年7月1日から7月10日まで

改定条件に該当した際、速やかに

適用期間

その年の9月から翌年8月まで(原則1年間)

改定月から次の定時決定(または再度の随時改定)まで

算定基礎届は、毎年決まった時期に全被保険者を対象として行う「定期的な見直し」の手続きです。
一方、月額変更届は、昇給・降給や通勤手当の変更などによって固定的賃金が変動し、一定条件に該当した場合のみ提出します。

一度決定された標準報酬月額は、原則として次回の定時決定まで適用されます。ただし、1〜6月に随時改定が行われた場合は、その年の8月までの適用となるケースがあるため、適用期間もあわせて確認しておきましょう。

▼算定基礎届についての詳細記事
【記入例あり】社会保険の算定基礎届とは?提出の流れや書類の書き方・電子申請の方法を社労士が解説

算定と月変が重なった場合、どちらを優先する?

4月から6月の間で給与が変動した場合、算定基礎届と月額変更届の両方に関係するケースがあります。

ここでは、7月・8月・9月改定時の優先順位や、実務上の提出方法について解説します。

7月・8月・9月改定は「月額変更届」が優先される

7月または8月・9月の随時改定(月額変更届)に該当する場合、決定される標準報酬月額は翌年の8月まで適用されるため、年1回の定期見直しである「定時決定(算定基礎届)」の結果よりも優先されます。

7月改定(4月変動):算定基礎届の提出は原則不要
8月・9月改定(5・6月変動):算定基礎届の「3. 月額変更予定」へ◯印をつけることで省略可

ただし、実際には2等級差が生じなかったなど随時改定の条件を満たさなかった場合は、改めて算定基礎届の提出が必要になるため注意しましょう。

なお、紙で提出する場合は、印字されている対象者の報酬月額欄を空欄にし、備考欄の「3.月額変更予定」を◯で囲んで提出します。
電子申請・電子媒体で提出する場合は、算定基礎届のデータから対象となる被保険者を除外して作成・提出しましょう。

出典:日本年金機構「被保険者報酬月額算定基礎届」をもとに一部加工して作成

実務ポイント:8月・9月改定時は算定と月変を両方提出する

5月・6月の昇給などにより「8月・9月改定」に該当する場合は、算定基礎届の提出時期と重なるため、「算定基礎届」と「月額変更届」をあわせて提出します。

この場合、対象者については算定基礎届の報酬月額欄を空欄にし、備考欄の「3.月額変更予定」を◯で囲みます。実際の報酬額や改定内容は、月額変更届へ記入して提出しましょう。

【ケース別】算定基礎届・月額変更届の判断事例

給与額が変動した際、「算定基礎届と月額変更届のどちらを提出するべき?」と迷うケースも少なくありません。

ここでは、実務でよくあるケース別に、算定基礎届と月額変更届の判断方法を解説します。

事例1:基本給や手当などの「固定的賃金」が変動した

基本給や手当など、勤務実績に関わらず決まった額が支払われる「固定的賃金」が変動し、標準報酬月額に2等級以上の差が生じる場合は、月額変更届の提出が必要です。

固定的賃金には、次のようなものがあります。

  • 基本給(昇給・降給)
  • 役職手当
  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 日給・時給単価の変更

残業代のように勤務実績によって変動する賃金とは異なり、支給ルールや単価そのものが変更された場合に、随時改定の判定対象となります。

事例2:残業代などの「非固定的賃金」が大幅に増えた

残業代など、月ごとの実績によって支給額が変動する「非固定的賃金」のみが増加した場合は、原則として月額変更届の対象にはなりません。7月であれば算定基礎届へ反映し、それ以外の時期であれば、原則として追加の手続きは不要です。

非固定的賃金には、次のようなものがあります。

  • 残業手当(時間外手当)
  • 休日勤務手当
  • 能率手当(インセンティブ)
  • 日直・宿直手当
  • 精勤手当

報酬総額が大幅に増え、結果として2等級以上の差が生じた場合でも、固定的賃金に変更がなければ随時改定は行いません。
この場合は、年1回の算定基礎届で4〜6月の平均報酬額を届け出て、9月以降の標準報酬月額へ反映します。

事例3:新たな手当を導入して報酬が増えた

新たな手当の導入に伴い就業規則を変更し、実際に従業員の報酬額が増えた場合は、原則として月額変更届の対象となります。

固定的な手当を新設した場合は、次の一覧にある「住宅手当、役付手当等の固定的な手当の追加・支給額の変更」に該当します。
一方、皆勤手当や精勤手当など、勤務により支給額が変動する手当であっても、新たに制度として導入した場合は、「給与体系の変更」として扱われます。

▼固定的賃金の変動

  • 昇給・降給(ベースアップ/ベースダウン)
  • 給与体系の変更(日給から月給への変更等)
  • 日給や時間給の基礎単価(日当、単価)、歩合給の変更
  • 住宅手当、役付手当等の固定的な手当の追加、支給額の変更
  • 一時帰休による休業手当や報酬変動など

参考:日本年金機構「随時改定(月額変更届)

このように、固定的・非固定的賃金を問わず、「新たな手当を制度として設けたこと」自体が随時改定の対象となる点は、重要なポイントです。

実務上は、新設した手当を初めて支給した月を「変動月」として、その後3カ月間の報酬平均額を算出します。

事例4:3月以前の給与を遡り支給した

4〜6月の給与に、3月以前の昇給差額や未払い分などの「遡及支払額」が含まれている場合は、原則として算定基礎届の対象となります。ただし、遡及分を含めたまま平均額を計算するのではなく、該当金額を除いた「修正平均額」で届け出る必要があります。

実務上のポイントは、次のとおりです。

  • 4〜6月の報酬総額から、3月以前の遡及分を除いて平均額を算出する
  • 算定基礎届の「⑧遡及支払額」欄へ、支給した金額と対象月を記入する
  • 遡及分を除いた本来の平均額で2等級以上の差が生じる場合は、月額変更届(随時改定)が優先される

出典:日本年金機構「被保険者報酬月額算定基礎届」をもとに一部加工して作成

遡及支払額をそのまま含めて計算すると、一時的に報酬が高く見えるため、本来より高い標準報酬月額が決定される可能性があります。誤って合算しないよう注意しましょう。

このように、遡及支払などイレギュラーなケースは通常より判断が複雑になりやすいため、社会保険実務に精通した社労士へ相談しておくと安心です。お気軽にお問い合わせください。

算定と月変についてのQ&A

算定基礎届と月額変更届は、実務上細かい判断が必要になるケースが多く存在します。

ここでは、労務担当者からとくに質問の多いポイントをQ&A形式で解説します。

Q1.6月以前に月額変動があった場合も、算定基礎届は必要?

A1. 原則として必要です。

1〜6月に月額変更届によって決定された標準報酬月額は、その年の8月分までしか適用されません。そのため、9月以降の標準報酬月額を決定するために、改めて4〜6月の報酬を算定基礎届で届け出る必要があります。

具体的には、次のように扱いが異なります。

1〜6月に月額変更により標準報酬月額が決定した場合
 →対象月に月額変更届を提出し、さらに7月に算定基礎届も提出する

7〜9月に月額変更により標準報酬月額が決定した場合
 → 7月の算定基礎届は提出不要、または省略可能で対象月に月額変更届を提出する

Q2.パートタイマーの支払基礎日数の数え方は、算定と月変どちらも同じ?

A2.異なります。算定の方が、対象となる日数の基準が緩和されています。

パートタイマーなどの短時間就労者の場合、算定基礎届では、4〜6月の各月が17日未満であっても、15日以上ある月の報酬をもとに標準報酬月額を算出します。

一方、月額変更届では、固定的賃金の変動後3カ月とも、支払基礎日数が17日以上必要です。なお、特定適用事業所などの短時間労働者は11日以上が基準となります。

日数が基準に満たない場合の扱いにも違いがあります。

算定基礎届
 → 3カ月とも15日未満の場合は、原則として従前の標準報酬月額で決定

月額変更届
 → 3カ月のうち1カ月でも17日未満(短時間労働者は11日未満)の月がある場合、随時改定の対象外

このように、「算定は15日以上の月があれば対象になり得る」のに対し、「月変は3カ月とも基準日数を満たす必要がある」という点は、実務上の重要な違いです。

Q3.通勤手当が増えた場合、算定と月変のどちらの対象になる?

A3. 原則として、月額変更届の対象となります。

通勤手当は、基本給や役職手当と同様に「固定的賃金」に含まれます。そのため、引っ越しによる通勤経路の変更や、運賃改定などによって通勤手当が増減した場合は、随時改定と判断されます。

ただし、通勤手当が変わっただけで必ず月額変更届を提出するわけではありません。
通勤手当変更後の3カ月間について、残業代なども含めた報酬平均額を計算し、従前の標準報酬月額と比べて2等級以上の差が生じる場合に、月額変更届を提出します。

一方、2等級以上の差が生じなかった場合は、月額変更届は提出せずに算定基礎届にて反映します。

まとめ

算定基礎届と月額変更届は、どちらも社会保険料の基準となる標準報酬月額を決定する手続きです。
しかし、提出のタイミングや対象となる条件が異なるため、4〜6月の昇給や手当変更時には、「どちらを優先するべきか」と判断に迷いやすくなります。

とくに、固定的賃金の変動や7〜9月改定の扱い、支払基礎日数の考え方などは、実務上のミスが起こりやすいポイントです。手続き漏れや誤った届出を防ぐためにも、算定基礎届と月額変更届の違いや優先順位を正しく理解しておくことが重要です。

判断が難しいケースでは、社会保険実務に精通した社労士へ相談することも有効です。必要に応じて専門家のサポートも活用しながら、適切に対応していきましょう。

算定基礎届と月額変更届の判断に迷ったら、社労士へご相談ください

あかつき社会保険労務士法人は、算定基礎届・月額変更届をはじめとした社会保険手続きや業務効率化につながる給与計算システムのご提案などを行っております。
従業員ごとの状況に応じた適切な届出判断や、実務負担を軽減する運用方法やシステムの導入等ご提案いたします。

次のお悩みに1つでもチェックが入りましたら、お気軽にご相談ください。
□各手当が固定的賃金・非固定的賃金のどちらに該当するか判断に迷う
□給与の締め日と支給日が月をまたぐため、提出時期の考え方が正しいか不安
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