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COLUMN

勤怠管理システムは、すごく難しい。

シリーズ:HRTech 人事労務システムの奥深さ(2)

勤怠管理システムを自力で導入した企業様から、何とかしてほしいというご相談がたくさんあります。弊社にご相談がよく寄せられるのは、Touch On Time(タッチオンタイム)、KING OF TIME(キングオブタイム)、AKASHIなど、高機能な勤怠管理システム。今回は勤怠管理システムの奥深さについて考察してみたいと思います。

勤怠管理システムの複雑さは、そもそも法律が複雑だから。

勤怠管理システムをはじめて設定したときには、一見ひとつひとつの入力項目は少なく見えたので「あら、楽勝かもしれない」などと思ったものです。ところが、設定を進めてみると何が何だかわからない・・・非常に複雑なつくりになっていました。考慮しなければならない項目が多く、その組み合わせにより結果が全く異なるのです。

  • その事業場の労働時間制は?会社カレンダーは?36協定は?
  • その事業場の1日の労働時間は?休憩時間は?時間外はどう集計すべき?部署によって異なる?
  • 残業やお休みの申請はどうする?誰が管理・承認する?
  • その従業員の労働時間は?どんな契約?
  • どんな勤務パターンがある?夜勤や宿直もある?
  • 振替休日はどんなルール?代休は使える?他にどんな休日がある?
  • シフトはいつ誰がどう決める?
  • 遅刻・早退はどう集計すべき?
  • 有給休暇はどう集計すべき?有給管理はどうする?
  • 締め作業はいつ誰がどうする?
  • 給与計算のためのデータはどうあるべき?

ざっと思いつくだけでも、このくらいのことは最初から考慮して設定しなければなりません。これが、事業場や雇用契約、そしてシフトパターンなどによって異なる組み合わせが作られ、それぞれに違う集計結果がもたらされることになるので大変です。

組み合わせが重要な勤怠管理システムの仕様は、とても「エンジニアチックな発想」で作られているものが多いです。その思考のクセを理解し、最初に全体設計をしてから取り掛からねば、なかなかうまくいきません。なぜこんなに複雑なシステムに・・・と愚痴をこぼしてしまいそうなのですが、ここまでやらなければ法定通りの設定にできない、ということなのですね。つまりは、そもそも法律が複雑だということです。

厚生労働省の「労働時間・休日」のページには、

法定の労働時間、休憩、休日

  • 使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
  • 使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
  • 使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。

と書かれた後に、「時間外労働協定(36協定)」「変形労働時間制」「フレックスタイム制」「みなし労働時間制」「年次有給休暇」・・・と続きます。全部知らなければ、法定通りの設定にはなかなかたどり着きません。

自力設定にギブアップしてしまうのは、しかたがないことかも。

勤怠が正しく集計されるようになるためには、労働時間や休憩・休日に関する法の知識に加え、勤怠管理システムの設定ノウハウを持っていなければならない、ということになりますから、自力で設定するのは至難の業といっても過言ではないかもしれませんね。ギブアップして当たり前。早めに専門家に任せてしまったほうが良いかもしれません。

しかもここで集計を間違えば、未払いリスクに直結します。時間外労働の集計、振替休日や代休の集計、それらの割増率の設定などについては、自力設定の後に専門家にチェックしてもらったほうが安心です。2020年4月以降の未払い賃金の請求権は3年に延長されており、そのうち5年に伸びることが決定しています。お早目に対策を・・・。

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