COLUMN
クラウドの給与計算システムと、人事労務システムの両方を導入していると、どちらにも「Web明細」機能や「年末調整機能」があります。お客様によく「どっちでやればいいの?」と聞かれるのですが、今回はその回答となる考え方について取り上げてみたいと思います。
クラウドシステムの良いところのひとつに、「外部連携できること」が挙げられます。これによって、ワンストップのシステムでは揃えられない機能、ひとつクラウドシステムでは弱い点を外部のシステムで補い、「いいとこどり」ができるシステム環境を整えられます。ただ、こうして外部連携させた後に悩ましいのが、「あっちにもこっちにも、同じ機能があった」という場合。その代表例が、給与計算システムにも、人事労務システムにもある「Web明細」や「年末調整」の機能。どちらでやればいいのか、すごく迷うことになります。たとえば
freee人事労務 & オフィスステーション
マネーフォワードクラウド給与 & SmartHR
といった組み合わせの場合、「Web明細」も「年末調整」も、どちらのシステムにもその機能があります。どちらかの機能がとても優れているという場合は、選択も楽かもしれません。でも、往々にしてどちらの機能にも、強み・弱みが同じくらいにあるものです。選択のポイントをまとめてみましょう。
従業員目線で考える | 人事担当者目線で考える | 経営者目線で考える |
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従業員からすれば、「年末調整はシステムAで」「給与明細はシステムBで」と、あちこちログインするものがわかれると、それだけログインIDやパスワードを管理せねばならなくなるため、「めんどくさいなあ」と思いがちです。この場合、できるかぎりログインするシステムを絞れるほうが、従業員にとっては楽。するとSmartHRやオフィスステーションなどの「労務管理システム」のほうが、住所変更などの身上異動、給与明細、年末調整、これらのすべてが一つのシステムで完結でき、使い勝手がよいという印象になるでしょう。
また、先にどちらのシステムが導入されていたか、という点も重視すべき点かもしれません。従業員の方々全員がシステムが得意であるケースは稀なので、「さあ今日からこちらのシステムも使ってくださいね」と言われても、切り替えには抵抗感があるかもしれません。この場合は今まで使っていた方を優先させる、というのも選択肢のひとつです。
人事担当者の目線で言えば、「業務との連動性」をより重視し、効率化を図るほうが良いでしょう。Web明細はもちろん、年末調整も最終的には給与と絡む機能ですので、給与計算システムに軍配が上がります。
特に年末調整は、申告書類が出来上がるだけでなく、還付金を給与や賞与に反映させる必要がありますので、そこまで一機にやってしまえる方が良いでしょう。現時点では、労務管理システムの年末調整機能は申告書作成機能までであることが多いので、給与システムの方で年末調整が行える方が、担当者としては効率的です。
Web明細の機能も、労務管理システムではいくつかの手当をまとめて表示させたり、名称を自由に設定できないケースもあります。「いつもの明細」と同じ表現の方が良い場合は、給与計算システムで明細表示させるほうが、安心感があるかもしれません。
経営者目線で考えると、給与計算システムになる場合と、労務管理システムになる場合の、どちらも考えられます。
たとえば現在の経営課題の多くが会計・財務の目線で語られるような領域だった場合、会計システムとの連動性が重要視される可能性が出てきます。給与計算システムの多くは会計システムと合わせて利用されているでしょうから、会計との連動やその先での経営分析等に活用しやすい使い方が好まれることになるでしょう。
一方で現在の経営課題が組織編制や戦略人事にある場合、多くの人事データを組織分析に活用することが求められるかもしれません。その場合、組織分析機能を有している労務管理システムであれば、多くのデータがその労務管理システムに集まるように活用される方法を、模索していくことになるでしょう。
こうした方向性の中で、Web明細や年末調整が直接影響を及ぼすわけではないかもしれませんが、従業員の日常的な活動をうまくシステムと絡めることで、活用すべきデータが集まりやすい環境を作ることが可能となります。
これらの考え方は、先日開催した「人事労務ペーパーレス化ウェビナー」で、株式会社マネーフォワ―ド広島支社 支社長 斉藤良和さん、株式会社SmartHR中国地方戦略担当 永野龍太朗さんにもフリートークで語っていただいた内容と重なります。やはり、その企業ごとに抱える事情や課題をしっかり吟味して、決定していただくのが一番、ということですね。